出典:http://www.naruto-movie.com/
先日、劇場版『THE LAST -NARUTO THE MOVIE-』を見てきたので感想とレビューを書こうと思う。この記事はネタバレ云々以前に、すでに映画を見た方にしかわからないような内容や表現も書いていくつもりなので、これから映画を見ようと思っている方は見終わってから記事を読んで頂くことをお勧めする。
書いていて思った以上に辛辣なレビューとなってしまったので予め断っておく。念を押しておくが筆者はNARUTOという作品が大好きだし、批判的なレビューを書くことが好きなわけでもない。ただ、大好きな作品だからこそ筆者の中でNARUTOの世界観やキャラクターが確立されており、だからこそ「これはNARUTOらしくない」という結論に至ってしまった。
ただ、それも筆者の思うNARUTOのイメージとは異なっているというだけで、他の人が見れば「これこそがNARUTOだ」という感想に至るかもしれない。くどいようだがこれはあくまで個人の感想だということを前提に記事を読み進めていただきたい。
原作との整合性
正直なところ岸本先生のストーリー総監修を疑わざるをえないような内容だった。まず原作との整合性が取れていない部分が多すぎる。
例として
- ● チャクラで壁に張り付くことさえできないヒナタ
- ● 手裏剣やクナイではなくエネルギー弾を連打する敵モブ
- ● 平気でナルトと分離する九喇嘛(もはや召喚獣)
- ● 敵の本拠地の場所とそこへの移動方法に気づいても本部に連絡せず小隊だけで突撃する浅慮なシカマル
- ● 女にフラれたくらいでやる気をなくし、任務を放棄するナルト
- ● 今更、ラーメンが好きと女の子が好きの「好き」の区別がつかないらしいナルト(これだけ鈍感だったら鉄の国でのサクラの嘘告白を見抜けなかっただろう。そもそも物語開始時点でサクラに恋心を抱くなど、それくらいの分別はあったはずである。)
- ● ナルトがサクラを好きだった理由が「サスケに負けたくなかったから」という形に落ち着けようとしているが、それなら いの でも誰でも良かったはずである。なぜ他のくノ一には一切関心を示さなかったのか。
などなど、ファンとしては期待していたのとは全く違う意味で驚かされてしまった。ストーリーの良し悪しは整合性だけで決まるものではないが、これでは作品の重要な要素である世界観やキャラクターのアイデンティティが再現されていない。
ストーリーそのものについて
ストーリー自体にもツッコミどころ、もちろん本来ツッコみたくなってはいけない場面でのツッコミどころが盛りだくさんで、映画館の椅子の座り心地の悪さが気になるレベルだった。(映画に夢中になっていれば上映中に椅子の硬さなど気にならないはずである)
ここでは3点を例として取り上げる。
ヒナタのマフラー
1つはヒナタのマフラーが編んでは壊れ、編んでは壊れ、編んでは燃やされ、しまいに爆破されるという展開である。回数はうろ覚えだが、映画のわずか2時間足らずの間にたしか4回くらい破壊された。
一生懸命ナルトを想って編んだマフラーが壊れるというのは間違いなくショッキングなシーンなのだが、あれだけ頻繁に壊れれば次第にそのショックも薄らぎ、ましてお約束となってしまってはもはやギャグシーンである。
ナルトがヒナタを好きになった理由
これこそが今作のストーリー一番の肝であり、2015年春に開始される短期集中連載の前提となる重要部分であるはずだが、よりによって一番納得出来ない。
ヒナタを異性として全く意識していない
↓
ヒナタが自分を好いてくれていることがわかる
↓
ヒナタが好きだ
短絡的すぎやしないだろうか。あれではヒナタが自分を好いてくれていることがわかったという理由だけでヒナタを好きになったみたいではないか。しかもその後フラれた(と思い込んだ)ナルトはやる気をなくしてふてくされ、任務に支障をきたすという流れ。これでは人間のクズとしか言いようがない。
ヒナタは原作でナルトを助けるために命がけで一人飛び出したり、第四次忍界大戦では手を取り合って戦っているのだから、もう少し意識していてもいいのではないか?それか忍界大戦から2年経っているのだからその間に任務を共にして仲が深まったとか…。
眼球の奪還
原作後半から危なっかしかったが特に今作でトネリから白眼を奪還するシーンは真剣にマズイと思う。眼球がまるでおもちゃのようにホイホイ取り外せるもののように描かれてしまっているからだ。あれでは小学生あたりがごっこ遊びで真似して大惨事になりかねない。
ヒナタ「返してもらいます」
トネリ「や、やめろぉぉ~!!」
のくだりは完全にギャグシーンと化していて場内の至るところからクスクス笑い声が聞こえてくるような状態だった。
念を押しておくが筆者は眼球の移植という表現それ自体を批判しているわけではない。リンがオビトの写輪眼をカカシに移植した時のように、「専門の医療技術(忍術)による手術が必要」くらいの表現はするべきではないだろうか。
あれだと麻酔も何もなしに、しかも素手で直接眼球を摘出しているようにしか見えない。
総括
お世辞にも満足の行く内容だったとは言えない。本気で上映中に1度席を立とうかと思ったほどだ。「NARUTOファンとしてこれ以上は見たくない」という想いと「NARUTOファンだからこそ、どのような内容であったとしても見届けたい」という葛藤の末、最後まで見ることを選んだ。
そうは言ってもある程度以上NARUTOが好きなら見ないわけにはいかないだろうし、何よりこれは私個人の感想なのであなたにとっては最高の作品だったかもしれない。いずれにせよNARUTO自体は完全に完結してしまうわけではなく、2015年春から続編が連載されるようなので、今後また童心に戻って楽しめることを願っている。